蒲田の切子ガラス(二) グラスフォレスト代表 鍋谷 孝
2007年9月掲載
いよいよ工場オープンデーの当日です。七月の第三週の土日。天気は上々です。
みなさん来てくれるだろうか?暑いと足が遠のくのではないだろうか?場所も蒲田駅から十五分も歩くし、道順もわかりにくいし・・・とマイナス思考が頭の中を駆け巡ります。
午前十時、二階の展示室でグラスを拭きながら待っていると、階段を上がってくる足音が聞こえます。次々と展示室、そして隣のアウトレットコーナーに人がきます。小学生を連れた親子、年輩のご夫婦、中高年の女性のグループ、散歩の途中の年輩の男性、二十代のカップル。
六畳の展示室は、いっぱいになってしまいました。「ここで、こんなきれいなガラスを作っているなんて知らなかった」みなさんびっくりしています。入り口は鉄格子の門で締め切っていて、中でなにをやっているのかまったくわからない工場でしたから、当然かもしれません。
みなさんきょろきょろしながら、上がってきます。二階は、住まいの作りだからでしょうか。イメージと違っていたのかもしれません。この場所は二十数年前は、私たちの家族と職人さんたちが住んでいたところ。展示室は、私の部屋。アウトレットコーナーは、元食堂。妹や弟の部屋は、倉庫になっています。
一時間くらいたつと、一階で切子体験をしていた人たちが、自分たちが作った切子グラスを手にもって展示室へ入ってきます。「切子体験どうでした?」と尋ねると、「とてもおもしろいですね」「最初は難しいと思ったけれど集中していたから時間があっという間にすぎてしまいました」「もっとやりたいですね」「次回はいつですか?」と目を輝かせて話してくれます。中には自分の作品を見せてくれる人も。私もうれしくなってしまいます。体験する人、展示室を見る人で日頃人気のない二階もにぎやかです。
そんな中で、多くの人から尋ねられたことがあります。「長い間大田区に住んでいて、切子の工場があるなんて知らなかった。」「切子というと江東区や墨田区のイメージがあるけれど、なぜ蒲田にあるのですか?」
なぜ蒲田に切子があるのでしょうか?このつづきは次号で・・・ つづく
(なべたに たかし)