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医療の現場から (1) 心身一如   長田 夏哉

2010年1月掲載  

 

 2回にわたって好きなことを書いてよい、という機会をいただきましたので、日常の診療でいつもお伝えする、基本的な事柄を挙げさせていただくことにします。
 私たちはこの世で生きている限り、肉体を持たず存在することはできません。身体とは不思議なもので、不具合なく過ごしている時は、あるがままが当然なのですが、反対に不調を感じると、そこだけが浮き上がっているかのように大きく感じられるものです。
 身体の不具合と心の持ちよう(日々感じていることや、とてもよく考えていること)はお互いに影響をし合っている、という事が最近の医学でも認められてきています。
 しかし、この心と身体のつながりを目で見たり、検査などで確認したりすることはできません。そのためか、身体の不調を感じている人に対し、それに伴う心の不具合や訴えにしっかりとフォーカスすることは医療の現場でも少ないように思います。
 ですが、心と身体はひとつのものとしてつながっていて、お互いが別々ではなく関係性の中で働きあっているというのは多くの方も経験があることでしょう。すべての身体の不調や不具合には、自分で気がついている、いない、にかかわらず心の働きも関与しています。もともとふたつの別のものをひとつにあわせてみているのではありません。はじめからひとつのものを、心と身体の、ふたつの面からみていくというのが大切な視点です。これを東洋医学の言葉では「心身一如」と言います。
 ご自分の身体に不調が生じたら、その不調の奥にある心のメッセージにも耳を傾けてみましょう。そこに思いがけず、不調をとく鍵がみつかるかもしれません。心を開いて胸のうちを話すことで、身体の不調が軽減される、ということはよくあります。不安や心配、悲しみや怒りを感じないように押さえつけていると、それらはいつしか心だけでなく、身体にも表現の場をみつけることになるのです。心の代わりにカラダがNOと言っていることはよくあります。
 心と身体の切り離せないつながりを見つめていくと、自分自身のライフスタイルにも徐々に視点がいくようになります。習慣的なエクササイズや、気分を高める趣味や人間関係、家族関係が自分の真の健康の基盤となることにも気がつくでしょう。
 「心身一如」を心に留めて、真の健康を目標にするための、より具体的なアドバイスなどを次号では記してみたいと思います。(つづく)

 

 

 

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