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医療の現場から (2) しりぞけるより引き受ける視点   長田 夏哉

2010年2月掲載  

 

 今回は、心と体のつながりに意識を向けて真の健康を目標に、最も大切だと感じ、診療で私自身が常に忘れまいと心がけている具体策をご紹介いたします。「すべてを引き受ける」視点です。
 私たちは、ともすると病気や不具合などは嫌なものとして排除しようとします。膝が痛ければ、「こんな膝思うようにならなくて本当に困る」と不満を言い、腰が痛ければ「あの重い荷物を運びさえしなければ・・・」と悔やみ、怪我で松葉杖を使わざるをえなくなると「こんな不便はもうこりごりだ」と怪我に怒りを感ずるのです。
 でも、身体は私たち自身です。心で考えていること、感じていることは実際に目にはみえないし手でつかめるものではありませんが、しっかり体に影響を与えるということを前回書きました。
 ですから、日常的に体の痛みや不具合を嘆いて、不満やぐち、不安や心配を延々と言い続けていると、あなたの身体はそれをしっかり聴いています。そして、その通りに反応するのです。
 体の不具合や痛みを感じたら、まずそれ自体を認めてみましょう。確かに膝は今まで通り痛く、腰は重いかもしれません。怪我をしたら松葉杖をつかないと歩けない。でも、それをそのまま認めてゆるしてあげてください。今までご苦労様、ほとんど何のお手入れも無くてよくぞがんばってくれたね、と少しの思いやりと感謝をつぶやきましょう。 そして、今の身体の状態でも心からありがたいと思えることに視点を少しずつずらしていく努力をするのです。
 たとえ膝が痛くても、腰が重くても立ち位置をずらせば、感謝できることは沢山あるに違いありません。膝は痛いけど脚があって家の中は自分で事足りてありがたいとか、調子が今ひとつだけど頭は冴えていておしゃべりできる楽しみを感謝できるなど、心から思えることならなんでもいいのです。
 些細なことだと思われても「心からありがたい」と感謝できることを見つけていくことは、決して無意味なことではありません。目には見えませんが、心からの感謝の気持ちはポジテイブなエネルギーで、すべての人に備わる自然治癒システムのスイッチを入れます。そして、少しずつ不具合を引き受ける視点を学んでいき、体の氣(生命力)が「元氣」へむかって流れていくのです。
 心がさみしく冷えていて、感謝の気持ちがまったく見つけられない、という方は体そのものにアプローチする方法をおすすめします。優しいマッサージを受けるとか、グループでできる楽しい体操を習慣化するなど、負担が少なく、継続して楽しく取り組めるものを選択するとよいでしょう。
 それでも一人で無気力感におそわれてどうしようもない、という時もあるでしょう。そんなときは是非、当院はじめ、信頼できるかかりつけ医に相談してみてください。医学の世界でも、心と体のつながりは科学的にもさまざまな証明がされ、「精神神経免疫学」として最新の研究がなされています。
 きっと心強いアドバイスと励ましが得られると思います。皆様に幸多きことを祈っています。(おわり)

 

● 長田 夏哉 (おさだ なつや 田園調布長田整形外科院長 日本整形外科学会専門医)

 

 

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