子育て「子育て」と「子どもの権利条約」(その1)
― 子どもを健やかに育てる「子の最善の利益」 ― 若林 昌子
2010年4月掲載
愛読紙「我が街かわら版」から執筆の機会をいただきましたので、日頃、養育費相談支援センター等にかかわっている関係から、子育てに関連する「子どもの権利条約」〈政府訳「児童の権利に関する条約」〉の一部分を2回にわたり紹介したいと思います。第1回は条約の基本的な部分について触れることにします。
最近、子育て支援関連のニュースも増える傾向ですが、これを着実に現実化させるには、一人一人が意識的に関心をもつ必要性を痛感します。そこで、子育て問題の指針を示すグローバルスタンダードとしての「子どもの権利条約」に注目したいのです。この条約はパソコンで簡単に読むことができますし、読むと少なからず感動します。
子どもの権利条約は、1989年に国連総会で採択され、2006年12月時点で193の国と地域が批准した世界共通の英知でありルールです。
日本も1994年にこの条約を158番目の締約国として批准しました。日本は国連子どもの権利委員会から、婚外子の相続分差別などについて、この条約の趣旨に整合させることを勧告されています。
当然のことですが、締約国は条約を遵守する義務があります。また、批准された条約は国内的効力をもちますので、司法手続における判断基準になりますし、わたしたちの行為規範としての効果も期待できます。世界の先進国では着々とこの条約の趣旨を国内法に反映させる法改正を実現しています。
この条約には、「人類社会を構成する者すべてが、本来的に尊厳な存在であり、平等にして不可侵の権利を有するものであると認めることが世界における自由、正義及び平和の基礎である」とあります〈ユニセフ訳・前文1節〉。
つまり、条約は成人と同様に、子どもも一人の人間として尊厳ある存在であるというのです。子どもについて「人間の尊厳」を認めるとは、客観的な子どもの意思、気持ちに耳を傾け思いやることです。
しかし、子どもの気持ちを把握することは簡単ではありません。乳幼児とか子どものおかれた複雑な事情を配慮し、客観的な「子の最善の利益」を思いやることが必要です。声なき子どもの声を聞くことを法制度としてどのように保障するかが問題です。
子ども政策の原点として、この条約は、子どもは大人の保護を受ける権利をもち、父母から独立した権利主体であることを宣言しているのです。(つづく)