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子育て「子育て」と「子どもの権利条約」(その2)

― 父母の共同養育責任・「家庭」の意味 ―   若林 昌子

2010年5月掲載  

 

 20世紀初頭、ある思想家は「20世紀は子どもの世紀」であるといいましたが、残念にも前半は戦争の世紀に終わりました。21世紀こそ、誰でも安心して子どもを生み育てることができる社会、すべての子どもが健やかに育つ社会を実現することができるのでしょうか。前回に続き、「子どもの権利条約」から、父母の共同養育責任、子育てと家庭の意義について取り上げます。
 養育費相談支援の現場からみると、子育て支援の社会的基盤の貧しさを痛感します。厚労省の平成18年の調査では、離婚母子世帯の養育費の受給率は19%に過ぎません。これには協議離婚制度のあり方、離婚後の単独親権制度の問題など多くの問題が絡んでいますが、養育費の取決めをしても、その約束を守る人の方が少ないのが現実の姿です。この背景には、最近の経済事情も大きな影を落としています。

 親の養育責任について、この条約は、「いずれの親も児童のケア及び発達について共同責任」をもち、「子の最善の利益」を基本的関心事とすることを求めています〈18条〉。日本の民法は父母が婚姻中は共同親権としますが、それ以外の子どもについては例外なく単独親権とします。この硬直した制度は早急に見直す必要があるでしょう。
 さらに、この条約は、「児童は、その人格の全面的かつ調和のとれた発達のために、家庭的環境の下で幸福、愛情及び理解に満ちた雰囲気の中で成長すべきである」〈前文6節〉として家庭の価値を重視しています。また、「親が働きに出ている場合、その児童が資格のある児童養育サービスを受ける権利を有する」こととして、締約国に対し、父母の就労を当然の前提とした子育て支援を義務付けているのです(18条)。これによって、父母共に真に共同して養育責任を果たすことが可能になります。
 私は2005年にシドニーの家庭裁判所を訪ねました。裁判所には保育園のような雰囲気のエリアがあり、手続は子どものための独立した代理人制度をもつことを知り感動を覚えました。子どもの権利条約が生きていることを実感したのです。
 この国際的潮流を素直に受けとめ、「子どもの権利条約」を社会的共有財産にする必要性を痛感します。(おわり)

 

●若林 昌子(わかばやし まさこ)
 下丸子在住

 

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