草の根の国際交流体験記(その一)
―IN大田区の姉妹都市 セーラム市― 若林昌子
2011年3月掲載
マサチューセッツ州セーラム市が大田区の姉妹都市であることをご存知でしょうか。セーラム市は大森貝塚の発見者モース博士の故郷で、大田区は1991年に同市と姉妹都市提携しました。私は、このおかげで昨年九月、第18回セーラム市・ピーボディー・エセックス博物館親善訪問団に参加させていただきました。以下、ささやかな体験記です。
今回の親善訪問プログラムの主な内容は、セーラム市長の表敬訪問、小学校・農業高校・エセックス博物館などの見学、セーラム市民グループとの交流会、そしてホームステイでした。私は参加してみて、今年、20周年を迎えた姉妹都市交流は、双方の参加者それぞれが国境を越えて心と心をつなぐ草の根の国際交流の第一歩だと実感させてもらいました。
この訪問団は、大田区が大田区民(及び区内に勤務先のある人)を対象に公募したものですが、今回の参加者は17名(年齢20歳から80歳まで、男女比3対1四)でした。特に驚いたのはリピーターが多く、7回目という若い女性の他、2回目の参加者が数名いたことです。どこにその魅力はあるのでしょうか。私達がボストンに到着したとき、空港に出迎えてくださったセーラム市民グループのメンバーと7回目のリピーター女性とが抱き合って再会を喜び感動に涙ぐむ姿を見て、その答が分かったような気がしました。
セーラム市では、先ず、ウエルカム・パーティーに招待され、セーラム市側の支援グループの一人一人が旧知のように温かく声をかけてくださいました。「下手な英語ですみません」、「あなたの英語は上手ですよ」というやり取りから、逆に、日本語で話しかけてきた人に、「あなたの日本語はすばらしい」と返すなどして一緒に大笑いになりました。また、東京・京都のほかに、「広島」を話題にする人が多く、お互いに心の中に「広島があること」を教えてもらいました。
私のホスト・ファミリーであるジェイン・ドワイヤーさん(元校長先生)は、パーティー会場入り口で待ち構えてくださり、その温かい雰囲気に安堵しました。ジェインさんは、これまでに30人の日本人をステイさせた経験があり、当日は洋服に羽織を着用し、彼女がこの親善交流を心底楽しんでおられることが印象的でした。
セーラム市庁舎訪問では、市議会室で市長の出迎えを受けました。大田区の国際交流への努力を褒め称え、姉妹都市交流を益々発展させたいとの市長メッセージには惚れ惚れしました(セーラム市のHP参照)。その他、小学校、農業高校の訪問の際も、先生方の対応は友好的で、各自の教育についての自負が感じられました。セーラム市ではエセックス博物館の存在は特筆すべきであり、その充実振りはセーラム市民の親日感情の象徴ともいうべきです。館内ではモース博士の日本に対する敬愛の思いが、脈々と受け継がれていることに、深い感銘を受けつつ博物館を後にしました。(つづく)
●若林昌子(わかばやし まさこ) 下丸子在住