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草の根の国際交流体験記(その二)
―ホームステイとその後の交流―    若林昌子

2011年4月掲載  

 

 セーラム市親善訪問の大きな柱は、なんといってもホームステイです。2泊3日の短期間ですが、そのすべてが忘れ難いものになりました。私の受け入れ家庭は、前号にも書きましたが、ジョアンさん、ご子息夫婦の3人家族で、3月にはお嫁さんが出産予定というお幸せな雰囲気の家庭でした。
 特に印象的だったのは、居住家屋が1830年代に建築された木造建築だったことです。その古いことに関心を示したら、彼女は家族の歴史を誇らしく話してくださいました。その背景には、地震もなく気候風土の穏やかなことも影響していると思われますが、家族の安定した歴史がなければあり得ないことを考えさせられました。その地域全体が、築200年前後の建物が並ぶ高級住宅街であり、海運業で栄えたセーラムの歴史に思いをはせました。
 私は15畳ほどの2階の寝室に案内され、リビングのように広いバスルームなど全てが広々と快適な雰囲気でした。彼女の趣味はガーデニングというだけあって、その家の周囲は花が咲き乱れ、家の内外ともに生活を楽しまれ、廊下には着物が掛け軸のように飾られ、家のいたるところに家族の写真が飾られていました。
 次に、印象的だったのは、近所付き合いです。平素から隣人を家に招き食事を共に楽しまれるのです。私の滞在中も、近所の人、現役時代の親しい先輩をお招きし、ロブスターをいただきながら楽しい夕食会でした。初孫誕生の話題から、働きながら子どもを育てた話題に花が咲き、教員であった彼女達の育児休業は女性の力で勝ち取ったものだといわれ、日本の育児行政、社会的基盤の脆弱さを改めて痛感しました。
 鳥獣戯画のプリントされたランチョンマットなどをお土産に持参し、「日本最古のマンガ」を紹介することができました。息子さんはすぐにインターネットで検索し、800年前に日本のマンガ文化が生まれ、サルやウサギを擬人化して楽しんだ、当時の風刺、ユーモアの文化を知ってくださり、次の訪日の際には鳥獣戯画を見たいといわれました。
 ジョアンさんの運転で海岸をドライブし、海難記念公園などめぐり、彼女は、「ホームステイは、あなたのビッグ・ホリデーよ」といいながら、終始、さりげなく温かくもてなして下さいました。彼女のホスピタリティーには心から脱帽しました。彼女の近い来日を心待ちにしています。
 大田区主催のさよならパーティーを迎え、私達はコーラス、ティー・セレモニ―、おサルの籠やなどを用意し、お世話になったセーラム市のメンバーと共に楽しみ別れを惜しみました。その後も、ジョアンさんから心温まるメールをいただき、彼女のお孫さんが無事誕生されるよう祈りつつメールを楽しんでいます。 大田区のもつ多文化共生のコンセプトが健やかに育つことを切に祈ります。(おわり)

 

●若林昌子(わかばやし まさこ)  下丸子在住

 

 

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