モンゴルからの学生たち 1 モンゴル招聘奨学生の面接 波多野 大介
2012年8月掲載
朝日新聞社には招聘奨学生という、海外の若い人がASAで働きながら学校に通う制度があります。日中国交正常化の記念事業として日本と中国の間で始まり、現在は中国、韓国、台湾、ベトナム、モンゴルの5カ国(?)から毎年120名の学生が来ています。大田区でもモンゴル人とベトナム人があわせて10名います。私が学生の面接で何度かモンゴルを訪れた時に感じたことをお伝えします。
初めてモンゴルに行ったのは2009年3月です。平均気温マイナス10℃でとても寒く、石炭を焚いて暖房にするので空気は相当汚いと感じました。市内にゲル地区というエリアがあり、ゲルと呼ばれるテントで勝手に住んでしまうことも問題になっていて、空気だけでなくゴミなどの衛生面でも厳しい環境です。
モンゴルの首都ウランバートルには、ASA有志が設立したNGO「モンゴル日本青年交流支援センター」があります。そこで日本語や日本式マナー、ビジネスマナー、原付免許などの教育を行っています。そのNGOで書類選考、面接、筆記試験をクリアした学生を面接します。国立大学の学生なども挑戦していて、競争率は約10倍になります。みんな、「モンゴルはこれから大きく経済発展する。そのために勉強して国に貢献したい」といい、今の日本の学生に感じられない強い意欲を感じました。
モンゴル人は、とても親日的です。相撲も大人気です。人種が近いこと、敗戦後経済成長して先進国になったことなど「日本が好き」な理由は様々です。日本語教育も盛んで多くの大学に日本語科がありますが、経済的な問題で海外に留学するチャンスが少ないため、この招聘奨学制度へ挑戦する学生が多いのです。ちなみにモンゴルの人口は270万人強、そのうち約半数の120万人が首都ウランバートルに住んでいます。もちろん、ウランバートル市内では草原も馬も羊も見ることができません。
モンゴルの6〜8月はとても気持ちのいい時期です。わずか数日間の雨で空気がきれいになり、草原がきれいな緑になります。次の訪問は6月でした。この時も応募者160名、最終面接者50名、合格者12名という面接を行い、来日中の学生家族への近況報告会などの日程を終え、ツーリストキャンプに行きました。郊外の大自然の中でゲルに泊まるモンゴル観光の目玉です。
市内中心部から車で20分も走ると草原になり、羊や牛がたくさん放牧されている中を約2時間走るとテレルジ国立公園のキャンプに着きます。きれいな草原、大きな岩山など大陸ならではの景色はもちろん素晴らしいのですが、一番感動したのはきれいな星空でした。6月のモンゴルでは日没が午後九時頃なので、きれいな星空が見られるのは午前2時頃です。きれいな天の川とたくさんの大きな星、ゆっくり動く人工衛星がはっきりと見えました。一見の価値ある星空だと思います。
今年も六月に面接のためモンゴルに行きました。そしてさらに発展した街、意欲ある学生に会うことができました。その話、日本にやってきた学生たちの話はこの次に。 つづく
(ASA下丸子店主 )
●波多野大介(はだの だいすけ)ASA下丸子、東蒲田店主