蜂飼いの独り言 蜂飼い見習いA
2013年11月掲載
養蜂は畜産に分類され、都道府県の担当部署への届け出が義務づけられていますが、一般的にイメージする養鶏や養豚とは違うかもしれません。一番の違いは、人が餌や水を与える必要がないことでしょう(状況に応じて砂糖水や人口花粉等を与える場合もありますが)。
ミツバチは巣箱から自由に飛立ち、半径3〜4キロといわれる行動圏内で花々を訪れ(訪花)、蜜や花粉を巣箱に運んできます。牛乳が牛のための乳であるのと同じく、ハチミツはミツバチの食べ物です。ミツバチは冬眠をせず、巣の中で身を寄せ合い、筋肉を動かして発した熱で群れを維持します。そのためのエネルギー源(人間にとっての炭水化物相当かな)としてハチミツを多く溜め込みます。一方、タンパク質やビタミン・ミネラル等を含むのが花粉(これは人間にとっての肉や魚に相当)です。
さて、ミツバチは当然、自分たち、自分の群れの為にハチミツを生産しており、蜂飼いの為に集めているわけではありません。蜂飼いはまず、巣箱を設置し、群れを強く、大きく健康になるように管理し、熊やスズメバチといった天敵、ダニやスムシといった害虫、カビやウィルスから守ります。
ミツバチは熊に襲われると、一部のハチミツを持って逃げ、また群れの血を繋ぐために群れを分ける際にも、ハチミツの一部を持ち去ります。そこで蜂飼いが危機を回避するため手助けし、群れを管理します。そして生まれた、余剰分のハチミツを分けてもらいます。それが、養蜂です。
ハチミツを貯めるには、訪花しハチミツに加工するミツバチがいること、近隣に蜜を出す蜜源植物が咲いていることが必要です。ハチミツを多く採ろうとするならば、花が蜜を吹く時期に合わせて、群れを大きくし維持しなければなりません。そこが蜂飼いの腕の見せ所です。大切なことは「ミツバチがたくさんのハチミツを集めるように手伝う」ことで、「多く採れるのはその結果」ということだと思います。
ミツバチは花蜜を集めてきて、それをミツバチ自身の酵素で分解してハチミツを作り出し、旋風して濃縮・貯蔵します。そのため、良質のハチミツを採るために必要なことは、なによりもミツバチが健康であることです。「良質なハチミツ」の定義は色々あるでしょうが、そのような健康なミツバチがじっくり熟成させたハチミツだと思います。
ミツバチの生産物はハチミツだけでなく、ミツバチが集めた花粉も健康食品として売られています。他にも、若い蜂が女王蜂と幼虫の食べ物として作りだすロイヤルゼリー、巣を守るために植物の分泌物を集めてつくりだすプロポリス等があります。
お節介にならず、ミツバチの気持ちになって手伝うことが出来ると、結果としてハチミツも多く採れる…それが蜂飼いの醍醐味ではないでしょうか。(おわり)