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蒲田の切子ガラス(一)   グラスフォレスト代表 鍋谷 孝

2007年8月掲載

 

  私は、ガラス工藝の企画・制作・販売の小さな会社を妻と営んでいます。ガラス工藝のなかでも江戸切子という伝統的な技法を使うものです。「どんなデザインのガラスにするか」を考えたり、お客様の要望、予算によって切子ガラスの記念品を企画したり、作ったガラスを食器専門店やギャラリー、イベントなどで販売をしたりしています。また、ガラスについてのお話などをする機会もあります。
  工場は東亜硝子工芸という別会社になっています。蒲田で五十年以上、江戸切子のガラスを作る仕事をしている父と、十五年以上になる弟が製作の中心です。
  いままで、お客様は大田区以外の地域の方が多かったのですが、二年前に、妻が「大田区で作っているのだから、大田区の人に知ってもらうことを考えたらどうかしら?」と話しかけてきました。そして「工場を一般に開放するのはどうかしら?」と話はつづきます。
  工場は町工場。一般の人が見学する体制も整っていません。「工場を見てもらうだけではなくて、製品も展示したり販売できればいいわね。」と妻のイメージは広がります。「切子の体験をしてもらったらどうだろうか?」と私。
大まかなプランができたところで、父や弟に相談です。「できる範囲でいいから地元で始めてみない?休みの日にイベントやると仕事休めないけどどうかな?」「一度、やってみるか。ただし、お金はかけないでやろう」と父と弟。 話は具体的に進みます。日程も決まりました。工場の一階は、切子の体験コーナーです。有料予約制として、年齢も小学校四年生以上としました。担当は弟。二階は、工場で作られる切子ガラスの展示販売。アウトレットコーナーも設けることにしました。私と妻が受け持ちます。受付はボランティアの人をお願いすることにしました。ちらし、ポスターは、地元のイラストレーターのMさんに頼みました。切子作業のイラストを前面にしたものを作ってもらいました。
  ちらし、ポスターができあがると、知り合いのお店にちらしを置かせてもらったり、ポスターを貼らせてもらったり街の中を歩き回ります。予算がないので、自分たちで動くしかありません。開催日近くには、工場の近所を妻と二人でポスティング。前日には展示室やアウトレットコーナーの準備。これも二人でなんとかできました。
  あとは、「はたして人が来てくれるのだろうか?」期待と不安のなか当日を迎えました。つづく

(なべたに たかし)

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